2012-06-26 [スズムシ日記]
養父母への反発 岸田 秀
毎日新聞夕刊連載「私だけのふるさと」には心理学者の岸田秀さんが登場している。唯幻論など独特の心理学的解釈がすきだ。特に最近の少々毒の交じった論表に僕は溜飲を下げている。たとえば「日本は未だアメリカの属国だ。」などなど……。その反骨の一端が幼少の頃のエピソードで了解できるような気がする。連載でお送りしよう。
僕の家は、香川県の善通寺門前で「世界館」という劇場を経営していました。大正時代に浅草の劇場「電気館」で働いた興行師の祖父が、故郷に近い善通寺に世界館を開いたのです。戦前には歌舞伎から文楽、浪曲、手品師、水芸、それにガラスをばりばり食べる「鯨男」も来ました。花道や回り舞台があり、冬は火鉢も置いてあって、客は升席で酒を飲みながら鑑賞していましたね。だんだんと映画が盛んになり、戦後は椅子席にして映画館に変えました。
家の仕事なので、小学生の頃から、もぎりや切符売り、映写技師をやりました。当時はフィルムがよく燃えたので、映写機に気を取られ、映画は途切れ途切れにしか見られなかったのですが、(ベルリン五輪を描いた)戦前ドイツの「民族の祭典」とか「ハワイ・マレー沖海戦」「愛染かつら」、佐分利信主演の「男の償い」なんてのを覚えています。娯楽がないからいつも満席で、多いときは1000人くらい入ってました。(つづく)
近くに住んでたので、世界館、よく行きました。懐かしいなぁ…
by まー (2020-09-25 18:33)