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危うい家族主義の強調 生活保護批判の行き着く先は [スズムシ日記]

私の社会保障論 反貧困ネットワーク事務局長:湯浅誠

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 有名な芸人の母親が生活保護を受給していたことが話題になったのを機に、第2、第3の該当者探しが始まり、さながら「狩り」の様相である。アメリカでは90年代、母子家庭の「不正・不適切」受給告発キャンペーン「ウエルフェア(福祉)クイーン」批判があり、制度変更が図られたが、それに似ている。

 アメリカとの共通点は、100%税金で賄われている生活保護制度が標的になっている点。違いは日本の場合、家族主義の強調に重きが置かれている点だ。

 今回の「騒動」は、有名芸人が高額所得者のため世論の逆鱗に触れたが、「騒動」を主導した自民党国会議員の狙いは「家族の扶養義務の強化」。20122月に発表された自民党の「政策ビジョン」には、「『家族の力』の強化により『自助』を大事にする方向を目指す」とうたわれていた。件の騒動は「(家族による)『自助』『自立』を第一とし、(中略)負担の増大を極力抑制する」(同ビジョン)ための世論づくりに、格好の素材を提供した。

 「家族の自助」が、すべての家族において最大限に発揮されている、などと言うつもりはない。そうでない家族は、例えば国会議員の家族にもあるだろう。だがもし、高額所得者の事例を念頭に「家族による自助」を一般的に強化すれば、追い込まれるのは比較的低所得で、生活に困窮している家族である。

 06年に起きた北九州市の餓死事件では、被害者の男性は、コンビニでアルバイトしている次男に養ってもらうよう言われ続けていた。京都では、母親の介護で仕事に就けずに生活困窮に至った男性が無理心中を図り、母親を殺害する事件があった。家族全員が病死・餓死状態で発見される「孤立死」も相次いでいる。大阪では生活困窮の母子が首つり自殺した。

 友人からメールがあった。「警察が自殺企図者を保護したために役所に連絡したが『家族で何とかしてくれ』と言われた。警察は家族に連絡したが『関わりたくない』と言われたそうだ」と。友人は「同様の話が、今後さらに増えるのではないか」と懸念していた。

 自助、自立の精神は大切なものだ、と私も思う。しかし、それは自発的な精神の発露として貴重なのであって、負担抑制のためではない。他の目的のために強要された時点で、それはもう自助でも自立でもない。

 自助・自立、そして美しい「家族愛」が顕揚される陰で、「抱え込み」を強いられた家族が疲弊、消耗していく。結果として負担増になるばかりでなく、社会が重たく、暗くなるような事件が相次いでいる。

スズムシ:どう思いますか。随分前の吉本のお笑い芸人の母親のことでしたね。家族主義は美しい日本と言った安倍さんの大好きな事柄でした。道徳の教科化など、これから次々と提出されるであろう、愛国感情はどうもいけません。そんなことののど元を過ぎると、み〜んな忘れて、自民党さんに期待するなんて。一体どうなってんですかね。
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