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吉本隆明さんの孤独 大井清一 [切り抜き]

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 201244日の隆明さん追悼文。もう随分前の記事だ。切り抜きされたままで反故にするには勿体ない。毎日新聞の文芸担当記者「大井清一」さんの文章にこころが動くからだ。文章構成などにとても参考になる。それで、遅ればせながら提出してみようかな。やや長文なので連載にしましょう。副題は「原点にあった喪失体験」です。

 3月に87歳で亡くなった詩人・評論家の吉本隆明さんには、本紙もたびたび登場してもらった。鮮やかに浮かぶ姿の一つは、20世紀末の199912月におこなった文芸評論家の加藤典洋さんとの対談「2000年を前に」である。

 晩年は歩行が難しくなった吉本さんだったが、当時はつえを突きながらも、しつかり歩いていた。会場は東京都台東区にあ森鴎外ゆかりのホテル。終了後に場所を移しての懇談の席で、お笑い芸人について話したのを思い出す。

 この時の対談で吉本さんは、「文芸の関与する人間の心や精神」が1000年前の平安朝とあまり変わらないのに対し、コミュニケーション手段の変化などによる「感覚文明の進歩の仕方はわれわれの想像を絶する」と話した。

 要するに表層の感覚や表現の仕方は時代に応じ変わっていくが、奥底にある人間の心や精神は1000年単位の長い時間を経ても、そう変わらないということだ。「ことば」の表現を、言語の発生にまでさかのぼって考えた彼自身の関心をうかがわせる発言だった。

 吉本さんの文学と思想については今後、さまざまな角度から論じられるに違いない。ここでは、多方面にわたる仕事の原点にあった「孤独」に注目しておきたい。

 「わたしの制作した小さな礎石の上を、多様な構想を抱いた人々が踏みこえてゆくことを願う。もちろん、たれよりもわたし自身が、わたしの試みを踏みこえて、ゆけるところまでゆくつもりである」

 代表作の一つ『心的現象論序説(71年)の「あとがき」の末尾だ。大学時代に出た文庫版で読み、衝撃を受けたのを覚えている。著作そのものは難しかったが、誰よりもまず自分が荒野を切り開いて進むという姿勢に打たれた。(つづく)


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