天声人語 [切り抜き]
なだいなださんが亡くなった。気骨のある闘士だったと思う。老人党党首だったね。天声人語にうま〜くなださんのことが描かれているのでチョイスしよう。
現実がよく見えた人だった。
なだいなださんは、ネット上の仮想政党「老人党」をつくり、政権交代を目指した。09年、民主党政権ができる直前、日本政治の惨状を肺炎に見立てた。交代が実現しても「患者の熱が一時下がっただけのようなもの」と、本紙に語っている
政権交代を3回、4回と重ね、治療を続けてやっと肺炎は治っていく。政治が一挙に変わるかのような空気の中、この精神科医が下した診断は透徹していた。多才な文筆家でもあった、なださんが亡くなった
現実を見すえつつ楽観主義を貫いた。名著『権威と権力』では、(絶望的な状況でも、希望を失わない人間)に自身をなぞらえる。そして理想とは(たどりつけるもの)ではなく、(見つめるべきもの)である
権威も権力もない社会は来ないとわかった上で、状況への発言を続けた。第1次安倍政権のナショナリズムヘの傾斜を「国家中毒」と批判した。いまのアベノミクスも疑い、先月末には(浮いた気分も、もう終わりでしょう)と書いた
大切にした臨床での心得がいい。アルコール依存症は「治す」のではなく、患者と「つき合う」。医師の仕事は「人間というものがよく見えるし、自分自身のいいところ悪いところが鏡のように映る」
残り少なくなった日々、周りの家族のつらさを深々と気遣っている。ブログに(結局死んでいくぼくが一番楽なのかもしれない)と綴った。「自分から一歩外に出て自分を見る」流儀を最後まで通して逝った。
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