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パラダイムシフト [切り抜き]

ポスト核抑止の安全保障概念を
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 米本昌平氏

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パラダイムシフトには映像が添付されている。主題と関連しているかのような意味深長な画像だ。関口純撮影となっている。純は女性?


 毎日新聞連載「パラダイムシフト」は副題が「2100年への思考実験」とある。だからこれは遠大な未来への志向性の問題であり、ここでは現状追認でない、課題解決への思考実験をしてみようというのである。さらに第一部「核」なき社会とあるから、これはまさに20世紀の最大の負の遺産である「核」をどう精算するかという論理構築でもあると思う。

 論考を展開しているのは総合研究大学教授 米本昌平氏(科学史)だ。寄稿とあるから、請われたのでなく、自らの主体性を発揮してのアクションだということになる。新聞もそれをとりあげたのだから、自らの論理性と同義であると言っているととらまえてもいいだろう。毎日の思考実験に賛同したい。米本氏の論考はやや長文だから2回に分けて提出しようと思う。

 それでは「ランド研究所」成立の経緯から繙くことにしよう。


 冷戦時代が「超近代」の名に値するのは、なにも核兵器の配備だけが理由なのではない。確かに、最悪時、米ソ両陣営あわせて69000発の核弾頭を配備し、睨み合う異様な光景が出現したのは、これに向けて非合理なほど合理主義が動員されたか

らに他ならない。だが、非合理なほどの合理主義の席巻は、核兵器というハード部門だけではなかった。これを運用するソフト部門も同様であった。

 冷戦の初期、アメリカのエリートたちは極端な合理主義を信奉し、眼前の事態をそのまま受け容れた上で、これを運用するためのさまざまな理論を案出した。しかもその上澄み部分は、現在の思考様式に強い影響を及ぼしている。それを象徴するのが、世界初の本格的シンクタンク、「ランド研究所」である。

 ■

 第二次世界大戦が終結するやいなや、カリフォルニア州に、アメリカ空軍を唯一のクライアントとする民間の研究機関、ランド研究所が誕生した。大学付属研究所のようなこのシンクタンクは、核兵器・ミサイル・軍事衛星などからなる壮大な冷戦装置を連用する基礎理論をつぎつぎまとめあげた。核戦略論と呼ばれる一連の研究である。

 冷戦時代、大陸間弾道ミサイルによる核攻撃に対して防御手段はないと考えられたから、その対抗手段として、もし敵が先制攻撃をしかけても、数倍の報復を与えるだけの反撃能力を保持しておく必要があった。伝統的な軍事理論には攻撃と防御の概念しかなかった。そこで、核兵器による威圧を議論するために考え出されたのが核抑止論である。これを具体的な政策論に焼き直してみせたのが、マクナマラ国防長官(当時)の「相互確証破壊」であった。要するに、核による恐怖の均衡論である。

 核戦略論の基本にあるのは、あらゆる要素を抽出して数値化し、すべての可能性を計算しつくすという態度である。ランド研究所は、この思考方法を多様な社会現象にもあてはめ、理論化し、政策論の基礎とした。ゲーム理論、合理的選択論、フェイルセーフ、システム分析などその成果を挙げればきりがない。特筆すべきは、経済の領域で数理論化を徹底的に試みたことである。その結果、ランド研究所の関係者からノーベル経済学賞の受賞者が輩出した。

(つづく)                


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