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パラダイムシフト 2 [切り抜き]

温暖化対策はポスト核の重要な課題


 社会的課題を前に、利用可能な資源をその対策にむけて徹頭徹庵合理的に組み立てるという、当然ともみえるこの態度の根源には、全面核戦争の脅威という底知れぬ不安があった。だが、1989年11月、ベルリンの壁が崩れたことで、核戦争の恐れは大幅に後退し、冷戦体制の大半が無用の長物と映る事態となった。意外なことに、ここに国連気候変動枠組み条約(温暖化条約)成立の一因がある。

 米ソ核対決を前提に組み立てられてきた国際政治に突然、脅威の空隙が生じ、国際政治はその生理として、この空隙を埋める新たな「脅威」が必要となった。こうして急遽、外交の主要課題として認知され始めたのが温暖化問題なのである。

 考えてみると、核戦争の脅威と温暖化の脅威とは似ている面がある。第一に地球レベルの脅威である、第二に各国の経済政策と深く連動している、第三に脅威の実態の確認が困難である。もちろん両者には違いもある。その一つが脅威の質である。冷戦時代、核戦争の脅威が過剰に見積もられた結果、後世には大量の核弾頭と核廃棄物が残された。他方、温曖化の脅威を少々大きく見積もったとしても、後世に残るのは、省エネ・公害防止の研究と投贅である。なんと幸いな脅威であろう。

 そして日本は東日本大震災に見舞われた。実は地震研究が飛躍的に進んだのは、地下核実験監視の目的で、高精度の地震観測網が張り巡らされて以降である。先進国のなかで、首都を含め国全体が地震の多発地帯の上にあるのは日本だけである。

 国家の第一の使命が、国民の生命財産を守ることであるのなら、戦争を主軸に置いた狭義の安全保障概念を拡大し、数百年の単位で到来する温曖化と巨大地震・巨大津波を脅威の内に繰り込んだ文明の設計とその実現に、全知性を傾けること、それがポスト震災に生きるれれわれに与えられた課題なのである。

(おわり)

 



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