熱血与良政談 [スズムシ日記]
美学?とんでもない 16年2月3日付夕刊
この人はコトの本質が分かっていないのではないか。先週、閣僚を辞任した甘利明前経済再生担当相の記者会見を聞いていて、そう思った。甘利氏はこう言った。
「お客の前で紙袋から現金の入った封筒を取り出し、スーツの内ポケットにしまう行為が本当だとしたら政治家以前に人間としての品格が疑われる行為だ。そんなことは、するはずがない」
今回の「口利き疑惑」を暴露した「週刊文春」報道のうち、甘利氏がとりわけ「事実関係が違う」と色をなして反論したのがこの点だった。「ポケットマネー」にしたわけではなく、政治資金として処理したと言いたかったと思われる。
だが、その場で内ポケットに入れたかどうかを私たちは問題視しているわけではないのだ。
業者がトラブルの交渉を有利に進めるために政治家の事務所に口利きを依頼し、そのお礼に現金入りの封筒をしのばせた菓子折りを(しかも大臣室で!)手渡す−−。もちろん口利きの実態は今後、解明されなくてはならないが、いまだにそんな行為が続いていることに、私たちは驚き、あきれているのだ。
甘利氏は「私自身は関わっていなかったとしても秘書に責任転嫁することはできない。政治家としての美学に反する」とも語った。
世の中にはそれを「潔い」と感じている人もいるようで、自民党内だけでなく「甘利氏は悪い業者にはめられた」といった妙な同情論もあるようだ。ただし、私はそれも問題から目をそらす、巧妙なすり替えだと思う。
問題の本質とは何か。業者が政治家にものを頼む際に金銭が介在することである。政治家はお金を提供してくれた人をえこひいきする。提供した方もそれを望む。こうした癒着によって行政の公正さは失われていく。ひいては献金の多寡により国全体の政策もゆがめられていく。
まず改めるべきは企業・団体献金だと思う。かつて国民の税金を政党に配分する政党交付金が導入された時、いずれは企業・団体献金は廃止すると与野党は約束したはずだ。そんな経緯も忘れ去られている。
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